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合田政光(観音寺市)
合田政光さんによるオリーブ牛肥育

高松市から50km以上離れた観音寺市。海からほど近い距離のところに田んぼが並ぶ地域がある。

「ちょっと面白いところに牛舎がありますよ」と言われていたのだが、確かにそうだった。メロンやトマト、セロリといった野菜を育てるハウスのすぐ横に、牛舎があるのだ。ここまで近接しているのも珍しい。

「しかもこれ、ぜんぶうちの畑だからね。いまはセロリの時期だから、みてくか?」

と笑いながら言うのが、大きな体躯の合田さんだ。そう、合田さんの牧場の特色は、畑での野菜栽培と併行しながら牛を育てていること。

野菜を育てるハウスのすぐ横に、牛舎がある
合田さんの牧場の特色は、畑での野菜栽培と併行しながら牛を育てていること

「いや、まあ初めは逆でね、堆肥が欲しいから牛を飼い始めたんだよ。」

という合田さん。この地域は海に近いこともあって砂質土壌のため、水はけもよすぎて肥料分がすぐに抜けてしまう。土壌を豊かにするためには、何年も有機質を入れ続けて改善していかなければならない。牛糞は畑にとって非常に優良な有機物なので、それを得るために牛を飼い始めたのだというのだ。

「持ってけ!」といただいた巨大なセロリの株

みせていただいたセロリの素晴らしかったこと!ハウス内にびっしりと林立している。「持ってけ!」といただいた巨大なセロリの株は、シャキッとした食感に爽やかな香りがとても美味しくて、牛の堆肥の威力をまざまざと識ったのである。

こんな畑の中にある肥育牛舎には、250頭もの肉牛がいて、これを家族五人で面倒をみている。畑の世話もしつつ牛も育てるのって、ちょっと想像がつかないほどに大変なのではないだろうか。

「そうだね、大変は大変だけど、肉牛と畑が連関して、お互いになければならない関係なんだよ。」

とおっしゃる。その笑顔の裏に、幾多のご苦労を超えてこられたのか、頭が下がります。いま、牛が出した糞は専用の堆肥化施設で完熟させたのち、自分の畑と仲間の農家の畑に散布する。畜産農家の中には、糞尿で環境を汚染するような輩もいることがあるが、合田さんのところでは立派に堆肥が野菜となってくれる循環を確保しているのである。

肉牛と畑が連関して、お互いになければならない関係
牛が出した糞は専用の堆肥化施設で完熟させたのち、自分の畑と仲間の農家の畑に散布する

素牛(もとうし)と呼ばれる子牛は毎月、合田さん自身が市場に足を運んで見極め、購入している。肉質を安定させるために、牛の交配をきちんと管理している産地を見つけ、いまではそこからの導入がほとんどだそうだ。

肥育牛舎には、250頭もの肉牛がいて、これを家族五人で面倒をみている

牛の群れの中に、去勢牛とメスを分けずに入れる

面白いのは、牛の群れの中に、去勢牛とメスを分けずに入れることだ。昔は去勢牛(元・オスのことです)とメスは成長の速度が違うので、分けて育てていた。しかしそうすると、特に去勢牛たちがあらぶり、互いに傷つけ合うことが多くなり、肉質に悪い影響が出るようになった。そんなある日、偶然にメスが去勢牛の牛舎に入ってしまったのだが、その牛舎ではケンカが起きなかったのだそうだ。いまでは、去勢牛の中に2割ほど、メスを混ぜるという育て方をしている。

そのおかげだろうか、合田さんの牛たちも実に優しく、落ち着きがある。と思いつつ、合田さんの息子さんの妻君がすごいことをしているのを発見!

「この子達、トマトが好きなんですよ。」

と、収穫したてのトマトをちょんとえさ場に置くのだ!
ええええええええええええええ、ほんとう?
と思った瞬間、牛がベロンと舐めとり、トマトを一瞬にして頬張り、食べてしまった!

いや、驚きましたね。先に牛と畑の循環と書いたけれども、実際に作物まで循環していたとは、、、(笑)

牛がベロンと舐めとり、トマトを一瞬にして頬張り、食べてしまった!
合田さんの牛たちも実に優しく、落ち着きがある

「牛肉の美味しさは霜降りだけじゃないんだ。オリーブ牛はね、脂に甘みや旨さが出るんですよ。これからはシツコサではなくて、美味しい霜降り肉を食べて欲しいね。」

と笑う合田さん。畜産関連の数々の賞をとってきた方が最終的にいきついたのは、オリーブ牛という道だったのだ。


こうして石井さんと、三軒の農家さんを訪ねたのだが、一貫して感じたことがある。それは、どの農家さんも信じられないほどに優しく、牛を家族のように愛しみ、育てていたことだ。

だいいち、元来は渋くて食べられないオリーブ粕を、天日で何日も干すようなことを、牛のためにやる石井さんがスゴい。しかもオリーブ牛を育てる技術を、香川の肉牛農家みんなのために無償で教えているわけだ。なんということだろうか。

その石井さんの思いを継ぎ、自分達の飼う牛たちをさらにオリーブ粕で高める西尾さん、畑さん、合田さん。もちろん彼ら以外の香川の肉牛農家みんながそうだろう。

香川県には、オリーブが起点となった循環がある。その循環がもたらしたオリーブ牛の味は、日本、いや世界の中でもここでしか味わうことができない、正真正銘のオリジナルの味である。

まだ食べたことがないという人、ぜひオリーブ牛を味わってみて欲しい。

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